三人称単数現在の”s”はどこから??

中学1年生で学ぶ文法の中でも、
三人称単数現在の s は、特に理解が難しいと感じやすい内容の一つです。

日本語にすると意味はほとんど変わらないのに、
英語では
playplays になったり、
likelikes になったりします。

「なぜ s をつけなければならないのか」
「つけ忘れてしまうのはなぜなのか」
そうした疑問を持つのは、ごく自然なことです。

実は、三人称単数現在の s は、
日本語には存在しない考え方に基づいた文法ルールです。
そのため、ただ形だけを覚えようとすると、
どうしても混乱やミスが起こりやすくなります。

しかし、この文法は英語を使う上で
必ず身につけなければならない重要なルールでもあります。

この記事では、
三人称単数現在の s を「暗記する文法」ではなく、
意味や考え方から納得して理解できる文法として捉え直し、
授業でどのように導入・説明すればよいのかを考えていきます。

三人称単数現在の s はなぜ存在するのか

― 英語の歴史から考える ―

三人称単数現在の s は、
中学英語の中でも特に「理由が分かりにくい」文法項目として知られています。
意味は変わらないのに、なぜ playslikes のように形を変えなければならないのか。
この疑問は、多くの学習者だけでなく、教える側も一度は抱くものです。

実は、この s は
意味を伝えるために生まれた文法ルールではありません
その正体は、英語がたどってきた歴史の中で「残った形」なのです。

(参考:堀田隆一『英語史で解きほぐす英語の誤解』研究社/
Otto Jespersen Growth and Structure of the English Language


古い英語では、動詞はもっと多くの形を持っていた

古英語(およそ5世紀〜11世紀)の時代、
英語は現在よりもずっと 語尾変化の多い言語でした。

動詞は、主語の人称や数によって形を変え、
語順よりも 語尾が文の役割を示す重要な手がかりになっていました。

この時代の英語では、
「誰が主語なのか」は語尾を見ることで判断できたのです。

(参考:David Crystal The Stories of English
Otto Jespersen Growth and Structure of the English Language


語尾が消えていく中で、s だけが残った

中英語期(12〜15世紀)になると、
英語は次第に 語尾の変化を失っていきます

発音の簡略化や言語接触の影響によって、
多くの人称語尾は消えていきました。

その中で、
三人称単数現在に使われていた -s(もともとは方言形)だけが残り、
やがて標準的な形として定着
していきます。

つまり、三人称単数現在の s は、
「重要だったから残った」のではなく、
消えきらずに残った結果として今も使われている形なのです。

(参考:堀田隆一『英語史で解きほぐす英語の誤解』研究社/
David Crystal A Little Book of Language


意味は変わらないが、「正しさ」として残っている

現代英語では、
語順が文の意味を決める大きな役割を担っています。

そのため、三人称単数現在の s がなくても、
多くの場合、文の意味は通じてしまいます。

それでも s が求められるのは、
この形が 英語の文法体系の一部として定着しているからです。

三単現の s は、
「意味のためのルール」というよりも、
文法的な正確さを示す慣習的な形だと言えます。

(参考:安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社/
Otto Jespersen Growth and Structure of the English Language


日本語話者にとって分かりにくいのは自然なこと

三人称単数現在の s が学習者にとって難しい最大の理由は、
日本語には動詞が主語に合わせて変化する仕組みがないことにあります。

日本語では、
主語が変わっても動詞の形は基本的に変わりません。

そのため、
英語の「人称に応じて形を変える」という発想そのものが、
日本語話者にとっては直感的ではないのです。

(参考:田中茂範『英語の発想』岩波新書/
安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社)


歴史を知ると、教え方が変わる

三人称単数現在の s は、
「意味が分からないから難しい」のではなく、
背景を知らないまま学んできたから難しい文法なのかもしれません。

この s が
英語の歴史の中で残ってきた形だと分かれば、
「なぜあるのか分からないルール」から、
「英語という言語の特徴の一つ」へと捉え直すことができます。

暗記に頼る前に、
納得感を伴った理解を与えること。
それが、三人称単数現在の s を扱う上での
一つの大切な視点ではないでしょうか。

授業では三人称単数現在の s をどのように扱うか

三人称単数現在の s は、
「覚えさせる文法」として扱うと、
学習者にとって負担が大きくなりやすい文法項目です。

その一方で、
考え方の順序を整理して提示すれば、
生徒に納得感を与えやすい文法
でもあります。

ここでは、
授業で三単現の s を扱う際の
一つの考え方と流れを示します。


① いきなりルールを言わない

授業の冒頭で、
「三人称単数のときは動詞に s をつけます」
と説明してしまうと、
生徒はその瞬間から
“理由のない暗記” に向かってしまいます。

まずは、
形の違いに気づかせる場面をつくります。

例:

  • I play soccer.
  • He plays soccer.

この2文を提示し、
意味がほとんど同じであることを確認します。


② 「なぜ形が違うのか」を問いにする

次に、次のように問いかけます。

日本語にすると意味は同じなのに、
英語ではどうして形が変わっているのだろう?

この段階では、
正解を求める必要はありません。

  • 主語が違うから?
  • 英語の決まり?
  • なんとなく?

どんな意見でも受け止め、
**「理由を考える文法」**であることを共有します。


③ 日本語にはない考え方であることを明示する

ここで初めて、
日本語との違いをはっきり示します。

日本語では、
主語が変わっても動詞の形は変わらないね。

でも英語では、
主語が「だれか」によって
動詞の形を少し変える考え方がある。

この説明によって、
生徒は
「分かりにくいのは自分のせいではない」
と安心できます。


④ s は「意味のため」ではないことを伝える

ここで、
三人称単数現在の s の性質を
シンプルに整理します。

この s は、
意味を大きく変えるためのものではない。

英語では、
主語が三人称・単数のときは
こういう形にする

という決まりが残っているんだ。

「通じる・通じない」ではなく、
「正確な英語かどうか」
という観点を与えることがポイントです。


⑤ 使う場面を限定して練習する

次に、
「いつ s をつけるのか」を
極力シンプルに整理します。

今は、
・今のこと
・三人称
・単数

この3つがそろったときだけ考えよう。

練習も、
この条件がそろった文だけを扱います。

  • He plays tennis.
  • She likes music.
  • My brother lives in Naha.

条件が崩れる文は、
あえて後回しにします。


⑥ 「忘れやすい理由」を共有する

最後に、
つけ忘れが起こりやすい理由を
教師から言語化します。

s は意味を大きく変えない。
日本語にもない。

だから、
忘れやすいのは自然なこと。

この一言は、
生徒の心理的ハードルを下げ、
その後の定着にもつながります。


⑦ まとめとしての一言

授業の最後に、
次のようにまとめます。

三人称単数現在の s は、
「覚えるだけのルール」ではなく、
英語の形の考え方の一つ

なぜそうなるのかを考えながら、
少しずつ使えるようになっていこう。


教師向けまとめ

  • 先に 気づき をつくる
  • 日本語との差を明示する
  • 意味より 形のルール だと整理する
  • 忘れやすさを否定しない

この流れを意識するだけで、
三人称単数現在の s は
**「納得しながら学べる文法」**になります。

Learn Nova Praxis はこう授業で考えさせる!

私が授業で意識しているのは、 「”納得感” を与えられるのか」 生徒が「学ぶのが楽しい!」「そういうことだったのか!」と思ってもらうことです!私は生徒に、考え方の一つとして以下のように考えさせます。

三単現 “s” ってどこから?

まずは、下の画像を見てください。

授業ではこのように生徒に考えさせます。この授業は、復習として1年の3学期や、2・3年の最初らへんの英語の授業で行うことが多いです。「主語が3人称で単数で動詞が現在形の時に使う!」と生徒が理解していることが大切です。その理解をさらに深めるためのものですね!

授業では↑のようなことを生徒と一緒に確認すると良いでしょう。詳しいことは「授業アイデア」で確認してください。

事実とは異なりますが、私は↑の画像のように説明しています。昔の英語には、一般動詞の前に必ず「do」か「does」が使われていたんだよ!でも、毎回毎回使っているとめんどくさくなって、省略したんだよね!

アニメーションを使って “do” “does” を移動させます。すると、”does”だけ、 “s” がはみ出しているのが見えると思います。このように、 “s”だけは省略しなかったと説明しています。

この考え方を応用すると、疑問文で “Do” や “Does” がいきなり出てきたわけではないことが理解しやすいと思います。また、疑問文や否定文にすると一般動詞が原形になることも納得してもらえると思います。

まとめ

三人称単数現在の “s” は理解するのは難しくはありませんが、日本人英語学習者が習得するのは大変難しいものです。英語教師の私自身もALTや英語話者と英語で話しているとき、完璧に三単現 “s” を使いこなしているかは自信がありません。日本語話者には難しいこの文法だからこそ、難しい理屈よりかも、”Do” や “Does” が一般動詞の後ろに隠れているんだよ!!と教えてあげたほうがよいでしょう!!

皆さんはどう考えますか??様々なご意見お待ちしております。


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