―― 永遠の問題、生徒がつまづくこの問題 ――
目次
はじめに|なぜ「比較」が必要なのか
to不定詞と動名詞は、それぞれ単独で解説されることが多い文法項目です。
しかし、実際の授業や質問対応では、必ず次のような場面に出会います。
- like to do と like doing の違いは?
- remember to do と remember doing はなぜ意味が変わるのか
- 「どちらも『〜すること』では説明にならない」
このとき教師に求められるのは、
暗記用のルールではなく、判断の軸です。
本記事では、to不定詞と動名詞の違いを
「意味の違い」ではなく、
行為をどの位置から見ているか という視点から整理します。
※ 本記事は生徒向けの即時的な説明ではなく、
教師自身の理解を深めることを目的としています。
結論|違いは「行為」ではなく「視点」
先に結論を述べます。
to不定詞と動名詞の違いは、
行為の内容の違いではなく、
行為をどの位置から捉えているかの違いである。
同じ行為であっても、
話し手が
- 行為の前に立っているのか
- 行為の中・後ろ側に立っているのか
その視点の違いが、
to不定詞か、動名詞かという形の違いとして表れます。
図解|to不定詞と動名詞の行為の捉え方
● to不定詞の世界
- 行為に これから向かっていく
- 行為は まだ実現していない
- 方向・目的・志向性が強い
👉 行為の「前」から見ている感覚
(コアイメージ:→)
● 動名詞の世界
- 行為の 中に入っている
- 行為は すでに成立している
- 経験・活動として行為を捉える
👉 行為の「中・後ろ」から見ている感覚
(コアイメージ:行為の中)
※ 重要
これは「時制(過去・未来)」の違いではなく、
行為をどの位置から見ているかの違いである。
to不定詞の to がもつ感覚|「→」
to不定詞の to は、前置詞 to と同様に
方向・到達点 の感覚をもっています。
- 今ここから
- 行為へ
- さらにその先へ
そのため、to不定詞は行為を
これから向かうもの/目的として置かれるもの
として捉えやすい形です。
- I want to study English.
- I stopped to talk to him.
未来形ではありませんが、
行為への志向性 が前面に出る形だと考えると整理しやすくなります。
動名詞 -ing がもつ感覚|行為の中に入る
一方、動名詞 -ing は、
行為そのものを 活動・経験としてひとまとまりで捉える 形です。
- 行為の中に入り込む
- 行為を対象として眺める
- すでに成立している活動として扱う
という感覚が強くなります。
- I like playing soccer.
- Studying English is important.
ここで重要なのは、
「過去形」という意味ではない、という点です。
行為を“成立したものとして扱う” という視点の違いです。
視点の違いが最も表れる動詞たち
① remember to do / remember doing
- I remembered to lock the door.
- I remember locking the door.
- remember to do
→ 行為を「これから実行すべきもの」として前から見ている - remember doing
→ 行為を「すでに起きた経験」として後ろから見ている
② forget to do / forget doing
- Don’t forget to bring your notebook.
- I’ll never forget meeting him.
- forget to do
→ 本来これから行うはずだった行為を意識している - forget doing
→ すでに経験した出来事を記憶として保持できない
③ try to do / try doing
- Try to open the window.
- Try opening the window.
- try to do
→ 行為の達成を目指す(成功するかは未定) - try doing
→ 行為そのものを方法として試す
④ regret to do / regret doing
- We regret to inform you that…
- I regret saying that.
- regret to do
→ これから行う行為についての心情的前置き - regret doing
→ すでに行ってしまった行為を振り返って後悔する
なぜ日本人学習者は混乱しやすいのか
日本語では、
「〜すること」
という一つの表現で、
行為を広く表すことができます。
しかし英語では、
行為を
- これから向かうものとして捉えるのか
- すでに成立した活動として捉えるのか
という 視点の違い を、
文法の形として選ばされます。
だからこそ、
教師側の理解が曖昧だと説明が不安定になりやすい部分です。
指導への示唆|教師が持っておきたい視点
この整理から見えてくることは明確です。
- 生徒に最初から使い分けルールを押し付ける必要はない
- しかし教師は、行為を見る「軸」を持っておきたい
- その軸があることで、質問や誤用に落ち着いて対応できる
to不定詞か、動名詞かは、
正誤の問題ではありません。
話し手が行為をどう捉えたか
その結果として、形が選ばれているだけです。
おわりに|文法は「見方の選択」
to不定詞と動名詞の違いは、
暗記すべき対立ではありません。
文法とは、
行為や世界をどう見るかという
視点の選択の集積である。
そう捉えたとき、
to不定詞と動名詞は、
英語という言語の思考のあり方を映す存在として
立ち上がってくるはずです。


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