to不定詞は「矢印」で考える

――英語は語順が命、動詞は各文1つ

to不定詞は、中学生にとって形は単純なのに、理解があいまいになりやすい文法事項です。
その原因は、to不定詞そのものが難しいからではありません。

多くの場合、
to+動詞の原形という「形」だけが前面に出てしまい、
パターンプラクティスに終始した結果、
生徒は「いつ・なぜ使うのか」を
考える機会を持たないまま進んでしまいます。

私は、to不定詞を教えるとき、次の二つを大原則にしています。

英語は語順が命
動詞は、各文1つ(原則)

この二つを出発点にすると、to不定詞は
「覚える文法」ではなく、
英語の語順を守ろうとした結果、必然的に生まれる形として見えてきます。


英語の文には「中心となる動詞」が1つある

英語の文は、必ず
主語(S)+動詞(V)
を骨格として成り立っています。

この V は、文の中心です。
だから原則として、

1つの文に、中心となる動詞は1つ

この考え方は、
時制・受動態・進行形・完了形など、
すべての文法事項の土台になります。


それでも「動詞を2つ使いたい文」がある

ここで、次の日本語を考えてみます。

私はサッカーを見ることが好きです。

意味を考えると、

  • 好きだ → like
  • 見る → watch

どうしても動詞が2つ必要になります。

しかし、
「英語は1文1動詞」という原則は崩せません。

この矛盾をどう解決するのか。
ここで登場するのが to+動詞の原形 です。


to不定詞は「動詞を2回使うためのルール」ではない

生徒はよく、こう考えます。

「動詞が2つあるから、to をつける」

結果としては近いですが、
考え方としては不十分です。

大切なのは、次の視点です。

動作そのものを、文の一部として入れたいとき、
その動詞は“そのまま”では置けない。

だから、

  • I like watch soccer. ❌

とは言えず、

  • I like to watch soccer. ⭕

という形になります。

この文では、

  • like → 文の中心となる動詞
  • to watch soccer → 「好きなこと」というひとかたまり

という役割分担が生まれています。


「不定詞」とは何が不定なのか

――理論と授業をつなぐ整理

文法的に見ると、**不定詞(infinitive)**とは、
時制・人称・数が定まっていない動詞の形を指します。

to不定詞の中の動詞は、

  • 過去でも現在でも未来でもなく
  • I / you / he によって形が変わらず

文の中心となる動詞にはなれません。

これが、教師がまず押さえておくべき
「本来の不定詞」の意味です。

その結果として、to不定詞は
文の中で特定の居場所を持ちません。

  • 主語になることもあれば
  • 動詞の目的語になったり
  • 名詞を後ろから説明したり
  • 文全体を説明する位置に来たり

使われる場所が一定ではありません。

だからこそ、学校教育文法では
to不定詞の3つの用法を、
意味ではなく
**「文の中での位置と働き」**で整理します。


to のコアイメージ

私は「→(やじるし)」で説明しています

私は、生徒に to を説明するとき、よくこう伝えます。

to は「→(やじるし)」のイメージだよ。

英語では、
文の中心となる動詞がまず1つあります。
その動詞の意味が、
次の動作に向かって伸びていくとき、
その「向き」を示すのが to です。

  • I like → to watch soccer
  • I want → to be a teacher

この矢印は、

  • 未来を表すものではありません
  • 実行を約束するものでもありません

意味・意識がどこに向かっているか
それを示しているだけです。

だから、次のような文でも自然に使えます。

  • I was happy → to see you.
  • I was surprised → to hear the news.

to を「→」として捉えると、
英語の語順と意味の関係が、一気に見えやすくなります。


【教師用】to不定詞の3つの用法

――意味ではなく「位置と働き」で考える

to不定詞の3つの用法は、
暗記のための分類ではありません。

次の問いで整理します。

この to不定詞は、
文の中で何を説明しているか?


① 名詞的用法

主語・目的語になれる

  • To study English is important.
  • I like to study English.

文の中で
「~すること」という内容そのものを表し、
主語や目的語として使われています。

だから、名詞的と呼びます。


② 形容詞的用法

名詞の直後に置かれ、名詞を説明する

  • I have a book to read.
  • She needs something to drink.

名詞のすぐ後ろに来て、
「どんな本か」「どんなものか」を説明しています。

だから、形容詞的と呼びます。


③ 副詞的用法

動詞や文全体を説明する

  • I study English to get a good job.
  • She went to the library to study.

動作の理由・目的を補足し、
文の中心となる動詞を説明しています。

だから、副詞的と呼びます。


生徒に伝えるときの説明(そのまま使える)

生徒には、次のように説明しています。

英語では、
文の真ん中に置ける動詞は1つだけ。
でも、
「~すること」「~したいこと」を言いたいときは、
動詞をそのまま置けない。

そのとき、
動詞の意味が次の動作に向かうのを表すのが
to+動詞の原形だよ。


生徒が共通して犯すエラーと指導の視点

❌ I like watch soccer.

→ 文の中心の動詞はどれ?
→ like
→ watch はそのまま置けない → to を使う

❌ I want to studying English.

→ to の後ろは
動詞として働かない場所 → 原形のみ

❌ I go to school for study.

→ 「何をするため?」
→ 動作なら to+動詞
→ 名詞なら for+名詞


まとめ

to不定詞は「暗記する文法」ではない

to不定詞は、

  • 形の暗記
  • パターン練習

のための文法ではありません。

英語は語順が命
動詞は各文1つ

この原則を守ろうとすると、
どうしても必要になる形です。

その必然性を共有できたとき、
to不定詞は、生徒にとって
「分からない文法」ではなく、
意味を伝えるための道具になります。


コメント