【第5回(最終回)】

教科は、どうつながろうとしているのか

教科横断・カリキュラムの視点から見える学校像


※注意書き

※本記事は、新しい学習指導要領(素案)について、現場の教師の目線で整理したものです。
公式な解釈や文部科学省の見解を示すものではなく、素案の記述や全体の方向性から「こう読み取れるのではないか」という一つの視点を提示しています。
学校種や教科、地域の実情によって受け止め方は異なる可能性があることをご理解ください。


なぜ、いま「教科横断」が語られているのか

新しい学習指導要領(素案)を読んでいると、
「教科横断」や「カリキュラム全体」といった言葉が、
これまで以上に目につくように感じられます。

ただし、
これは突然現れた新しい発想というより、
これまで積み重ねられてきた流れが、
よりはっきりと言語化され始めている

と捉える方が自然かもしれません。

「教科をなくす」「教科を超えて一体化する」
といった極端な話ではなく、
学校全体で学びをどう編むか
という問いが、前に出てきている印象です。


現行の学習指導要領でも、すでに起きていたこと

振り返ってみると、
現行の学習指導要領の段階ですでに、

  • 総合的な学習の時間
  • 探究的な学習
  • 各教科における言語活動の充実

といった形で、
教科を越えた視点は導入されてきました。

しかし現場では、

  • 教科は教科
  • 総合は総合

と、どうしても分断された運用になりがちだった
という実感もあるのではないでしょうか。

素案は、
この分断そのものを問題視しているというより、
教科間の関係性を、もう少し意識的に捉えてほしい
というメッセージを含んでいるように読み取れます。


素案から見える「教科」と「カリキュラム」の関係

新しい学習指導要領(素案)では、
教科の目標や内容を語る文脈の中で、

  • 学校全体としての学びの設計
  • 学年間・教科間のつながり

が、繰り返し示唆されています。

ここから見えてくるのは、
「教科完結」か「教科横断」か、
という二者択一ではありません。

むしろ、

教科という専門性を土台にしながら、
それらをどう組み合わせ、
どんな学びの流れをつくるか

という視点が、
これまで以上に重視され始めているように感じられます。


教科は弱くなるのか?という不安について

教科横断が語られると、
現場ではこんな不安も生まれます。

  • 教科の専門性が軽く扱われるのではないか
  • 内容が薄くなるのではないか

ですが、素案を読む限り、
教科の価値そのものを下げようとしている
とは考えにくいように思われます。

むしろ、

  • 教科で培う見方・考え方
  • 教科固有の知識や技能

があるからこそ、
教科を越えた学びが成立する、
という前提が置かれているようにも読み取れます。

教科横断は、
教科を「溶かす」ことではなく、
教科の力を持ち寄ること
だと捉える方が近いのかもしれません。


英語科への影響を、現場目線で考える

ここからは、
英語科に焦点を当てて考えてみます。

パフォーマンステストは、どうなるのか

教科横断の視点が強まると、
「英語科のパフォーマンステストはどうなるのか」
という疑問が出てきます。

素案を読む限り、

  • パフォーマンステストをやめる
  • 評価方法を統一する

といった方向性が示されているわけではありません。

ただし、

  • そのパフォーマンスは、何のために行われているのか
  • どの学びにつながっているのか

という位置づけは、
より意識されるようになる可能性があります。

英語科単独で完結するテストというより、
他教科や学校全体の学びと、どう接続しているか
が問われやすくなる、と考えることもできそうです。


言語活動は、どう位置づけられるのか

英語科では、
「言語活動の充実」が長く重視されてきました。

教科横断の視点から見ると、
言語活動は、

  • 英語科だけのもの
    ではなく
  • 学校全体で共有される学びの基盤

として再整理される可能性があります。

たとえば、

  • 他教科で得た内容を英語で伝える
  • 英語でのやりとりが、思考を深める手段になる

といった形です。

ただし、
これも「必ずそうしなければならない」
という話ではありません。

英語科が、言語活動の専門教科として
どんな役割を果たせるのか

を、学校全体の中で考える余地が広がる、
その程度の変化として受け止めるのが現実的でしょう。


現場的に見た、可能性と限界

教科横断やカリキュラムの再編は、
魅力的に語られやすい一方で、

  • 時間割の制約
  • 教員配置
  • 校内の共通理解

といった現実的な壁も多くあります。

素案は、
それらを一気に解決できる万能な答えを
示しているわけではありません。

むしろ、

できる範囲で、
学校ごとに編み直してほしい

という、
かなり大きな裁量を現場に委ねているようにも見えます。


シリーズ全体のまとめ

― 学習指導要領は、やはり「地図」である ―

ここまで見てきたように、
新しい学習指導要領(素案)は、

  • 目標
  • 人(教師・学習者)
  • 評価
  • 教科・カリキュラム

を、個別に変えようとしているというより、
それらの関係性を組み替えようとしている
ように感じられます。

その姿は、
「こうしなさい」という答えを示すものではなく、
「どの方向を目指すかを考えるための地図」
に近いのかもしれません。

地図は、
そのまま歩くことも、
自分なりにルートを選ぶこともできます。

この連載が、
新しい学習指導要領を読む際の
一つの地図の読み方として、
現場の先生方の思考を支えるものになれば幸いです。

第4回
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