やりとりは、なぜ大事だと言われるのか
私は、インプット仮説やアウトプット仮説よりも、
インタラクション仮説が一番大切だと感じながら、
日々授業をしています。
それは、
やりとりの中で起きる
「伝わらなかった」
「聞き返された」
「言い直した」
そうした瞬間にこそ、
生徒の学習が大きく動くと感じているからです。
しかし、それは
インプット仮説やアウトプット仮説が
悪いと言いたいわけではありません。
加えて、
どれか一つの仮説だけを信じ切ること自体が、
ナンセンスだとも感じています。
学習は、
ゼロか百かで進むものではありません。
インプット、アウトプット、インタラクション。
それぞれが、
必要な場面で、
適度に働くことで、
初めて学習になる。
私は、そう考えながら、
授業を組み立てています。
英語の授業では、
ペアやグループでの活動を
日常的に行います。
けれど、
「話している」ことと
「やりとりが起きている」ことは、
同じではありません。
予定どおり進む会話。
台本どおり終わるやりとり。
修正も、聞き返しも起きない活動。
それは一見、
スムーズな授業に見えます。
でも、
インタラクション仮説の視点で見ると、
少し物足りなさを感じることがあります。
インタラクション仮説が注目するのは、
会話がうまく進んだ瞬間ではありません。
むしろ、
会話がうまく進まなかった瞬間です。
- 聞き返された
- 言い直した
- 意味が通じなかった
そうした「ズレ」を、
どう処理したか。
そこに、
学習の芽があると考えます。
ここで重要になるのが、
教師の介入です。
私自身、言語活動を行う際には、
「活動 → 中間指導 → 活動」
というサイクルを大切にしています。
最初の活動では、
生徒はとにかく使ってみる。
伝わらなかったり、
言いよどんだり、
途中で止まってしまったりする。
ここでは、
うまくできるかどうかよりも、
どんなズレが起きたかを見ています。
中間指導では、
そのズレをそのまま放置しません。
しかし、
すぐに正解を与えることもしません。
やりとりの中で共通して見られたズレを拾い、
「どうすれば伝わりそうか」
「どこで止まってしまったのか」
を整理します。
それは、
やりとりの中で生まれたズレを、
もう一度学習可能な形に整える時間
だと考えています。
そのあと、もう一度活動に戻ります。
同じ活動でも、
生徒の中身は違っています。
さきほど言えなかったことを意識し、
別の言い方を試し、
聞き返しを恐れずにやりとりをする。
この二度目の活動は、
単なる繰り返しではありません。
インタラクションの中で起きたズレが、
一度処理されたあとの再挑戦です。
この「活動 → 中間指導 → 活動」という流れは、
やりとりを増やすための構造ではなく、
ズレを学習に変えるための構造だと考えています。
インタラクション仮説が重視する
「ズレが処理される過程」を、
授業の中に組み込むための、
一つの判断でもあります。
インタラクションは、
自然に起きるものではありません。
放っておいても、
必ず起きるわけではない。
だからこそ、
教師は常に、
「介入するか、しないか」
を判断しています。
たとえば、
- 生徒が言いよどんでいるとき
- 言い直そうとしているとき
- 伝わらずに止まってしまったとき
すぐに正解を言うこともできます。
文を言い直してあげることもできます。
でも私は、
あえて待つことがあります。
その沈黙の中で、
生徒が
もう一度考え、
言い直し、
別の言い方を探す。
その時間こそが、
インタラクションを
学習に変える瞬間だと感じているからです。
一方で、
いつまでも待つわけではありません。
伝わらない状態が続けば、
簡単な聞き返しを入れる。
言い直しのヒントを出す。
リキャストを使う。
介入しすぎず、
でも放置しない。
この微妙な調整こそが、
教師の仕事だと思っています。
インタラクション仮説は、
「やりとりを増やせ」と
命令する理論ではありません。
やりとりの中で、
何が起きたときに学習になるのか
を考えるための視点です。
だから、
インプットやアウトプットを
否定するものでもありません。
それらを
学習に変える接点として、
インタラクションがある。
私は、
そう捉えています。
ただし、
すべての生徒が
この「ズレ」に
すぐ耐えられるわけではありません。
やりとりの中で
不安になる生徒。
黙ってしまう生徒。
間違いを恐れる生徒。
ここには、
また別の視点が必要になります。
次回は、
「生徒は、どこで言語に気づいているのか」
Noticing(気づき)の視点から、
授業を考えてみます。
やりとりは、
量でも、
形でもありません。
教師の判断によって、
学習にも、作業にもなる。
そのことを、
自分の授業に問い返すための
理論として、
インタラクション仮説を
手元に置いておきたいと思います。


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