― 指導と評価をつなぐ3つの視点 ―
目次
近年、英語の授業では「パフォーマンステスト」を取り入れる学校が増えてきた。スピーチやプレゼンテーション、ロールプレイなどを通して、生徒の英語による表現力を評価する試みである。
一方で、実際にパフォーマンステストを設計してみると、次のような悩みを感じることも少なくない。
- 何を評価すればよいのか
- 言語材料は指定するべきなのか
- 授業との関係をどう設計すればよいのか
私自身も、パフォーマンステストを設計する中で多くの試行錯誤を重ねてきた。本記事では、そうした実践の中で私が特に意識している
「パフォーマンステストの設計」
「大切にしている3つの視点」
について整理してみたい。
なお、ここで述べる内容は制度の公式解説ではなく、現場で授業を行う教師としての一つの整理として読んでいただければ幸いである。
パフォーマンステストの設計について
パフォーマンステストを考えるとき、私がまず大切にしているのは単元目標を明確にすることである。
単元目標は、CAN-DOの形式で設定している。
そして私の中では、
「単元目標の達成 = パフォーマンステストでB評価以上を達成すること」
という考え方をとっている。
観点別評価においてB評価は「おおむね満足できる」水準を意味する。つまり、教師が行った指導を通して、生徒が到達してほしい水準である。
そのため私は、生徒に次のように伝えている。
全員がB評価以上を取れるように指導するのが教師の仕事。
A評価以上を目指すためには、あなた自身の努力が必要になる。
このように伝えることで、生徒にとっても評価の意味が理解しやすくなると感じている。
単元計画とパフォーマンステスト
単元目標を設定した後は、その目標を達成するための単元計画を立てていく。
例えば10時間構成の単元であれば、その中の6〜7時間程度で言語活動を行うように設計することが多い。
もちろん、すべての授業に言語活動を入れるわけではない。単元の序盤では、
- 文法事項の導入
- 新出単語の確認
など、知識・技能を中心に扱う時間も必要になる。
しかし、学習指導要領では
「言語活動を通して英語の力を育成する」
ことが明記されている。そのため、可能な限り言語活動を取り入れながら、生徒の学習をパフォーマンステストへと方向づけることを意識している。
私が大切にしている3つの視点
パフォーマンステストを設計するとき、私が特に意識している視点は次の3つである。
- 目的・場面・状況を明確にする
- 指導と評価の一体化
- 言語材料を指定しない
以下では、それぞれについて説明したい。
① 目的・場面・状況を明確にする
パフォーマンステストでは、目的・場面・状況の設定が非常に重要である。
例えば次の2つの課題を考えてみたい。
A
あなたの学校を紹介しなさい。
B
海外からの留学生を獲得するために、あなたの学校を紹介しなさい。
この二つの課題には大きな違いがある。Bの方が、
- 誰に
- 何のために
- どのような状況で
英語を使うのかが明確である。
このように目的や場面が具体的になることで、生徒の表現も変化する。生徒は単に英語を並べるのではなく、
- どの情報を伝えるべきか
- どのような表現が適切か
を考えるようになる。
また、私は課題を設定するとき
- 生徒がわくわくするか
- 身近なテーマになっているか
という点も意識している。
生徒にとって親近感のあるテーマや考えやすい課題であれば、生徒は主体的に表現しようとするからである。
② 指導と評価の一体化
パフォーマンステストは、単発のイベントとして実施するものではなく、単元の学習の積み重ねの中に位置付けることが重要だと感じている。
そのため、授業ではパフォーマンステストに向けた言語活動を段階的に行うようにしている。
言語活動では、まず生徒に活動させ、その後に中間指導を行う。中間指導では机間指導を通して、生徒の表出を確認しながら、
- 学級全体に共通するエラー
- 良い表現
を見つけ出し、それをクラス全体で共有する。
ここで大切なのは、答えを与えすぎないことである。板書がそのまま答えになってしまうと、生徒はそれを覚えるだけになってしまう。
そのため私は、生徒が
「あと少しヒントが欲しい」
と思える程度の指導を意識している。
中間指導の後には再び言語活動を行い、生徒が表現を改善できるようにしている。このような活動と指導の往復が、言語活動の質を高めると感じている。
中間指導の回数
私の授業では、言語活動の中で最低でも2回の中間指導を行うようにしている。
可能であれば3回程度行うことを目標にしているが、授業時間の関係で4回以上行うことは難しい場合も多い。
その理由は、生徒にまとまった活動時間を確保する必要があるからである。
中間指導が多すぎると、生徒が表現する時間が減ってしまう。そのため、
- 中間指導の質
- 生徒の活動時間
この二つのバランスを意識するようにしている。
③ 言語材料を指定しない
三つ目の視点は、言語材料を指定しないことである。
パフォーマンステストの目的は、思考力・判断力・表現力の評価であると考えている。
つまり、生徒が持っている知識・技能の中から
- どの言語材料を使うか
- どの単語を選ぶか
を自分で考え、判断し、表現することが重要になる。
もし言語材料を指定してしまうと、それは思考力・判断力・表現力というよりも、知識・技能の確認に近い活動になってしまう可能性がある。
そのため私は、言語材料を直接指定するのではなく、
その単元で学んだ言語材料を自然に使いたくなる課題
を設定することを意識している。
実践例:学校紹介動画プロジェクト
中学2年生の学年末には、次のようなパフォーマンステストを実施した。
「海外からの留学生を獲得するために学校紹介動画を作ろう」
まず、他校や海外の学校紹介動画を視聴し、
- 良い点は何か
- 自分たちの学校の魅力は何か
を考える活動を行った。
その後、
- 先生紹介
- 授業紹介
- 部活動紹介
- 施設紹介
などの内容を学級で話し合い、それぞれの項目ごとにグループを作った。
撮影した動画は学習者用端末を使い、iMovieで編集し、字幕をつけながら一本の学校紹介動画として完成させた。
授業では、生徒が端末を持って校内を撮影しながら、非常に楽しそうに活動していたのが印象的だった。
英語が苦手な生徒でも、
- 動画構成を考える
- 編集を行う
といった役割を担うことができ、グループで協力しながら課題に取り組んでいた。
おわりに
パフォーマンステストは、従来の筆記テストとは異なる難しさを持つ評価方法である。しかし同時に、授業の在り方そのものを見直すきっかけにもなると感じている。
どのような課題を設定するのか。
どのように授業と結びつけるのか。
どのように生徒の表現を支えるのか。
こうした問いを考え続けることが、英語の授業をより豊かなものにしていくのではないだろうか。
今回紹介した視点は、あくまで私自身の実践の整理である。現場にはさまざまな工夫があるはずであり、これらを共有しながら議論を深めていくことが、英語教育の改善につながるのではないかと考えている。


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