日本語はつなげる、英語は区切る
📘 この記事は 日本語と英語はどう違うのか ― 母語干渉から考える英文法指導の地図【完全ガイド】 の一部です。日本語と英語の違いの全体像は、まとめガイドからご覧いただけます。
目次
連用形・連体形と英語の構造の違い
はじめに
英語の授業で、
- 分詞
- 関係代名詞
- 不定詞
を教えるとき、
「なぜ英語はこんなに複雑なのだろう」
と思ったことはないでしょうか。
例えば、日本語では、
- 昨日買った本
- 走っている人
- 本を読んで寝た
と自然に言えます。
しかし英語にすると、
- the book that I bought yesterday
- the person who is running
- I read a book and went to bed
となり、急に構造が複雑になります。
なぜでしょうか。
その理由は、日本語と英語の「つなぎ方」の違いにあります。
今回のテーマは、
日本語は形を変えてつなぐ言語
英語は構造を作ってつなぐ言語
ということです。
私たちは「連用形」「連体形」を理解しないまま教師になっている
中学校の国語で、多くの人が一度は覚えたはずです。
- 未然形
- 連用形
- 終止形
- 連体形
- 仮定形
- 命令形
テスト前に必死に覚えた記憶がある人もいるでしょう。
しかし、
「連用形とは何か」
「連体形とは何か」
を説明できる人は意外と多くありません。
実際、英語教師である私自身も、若い頃は
「活用表の名前」
くらいにしか考えていませんでした。
しかし日本語と英語の違いを考えるようになると、
この活用形の考え方こそが、日本語という言語の特徴そのものを表していることに気付きます。
活用形とは何か
活用形とは、
言葉の働きに応じて形を変えたもの
です。
例えば、
「読む」という動詞を考えてみます。
- 読まない
- 読みます
- 読む
- 読む本
- 読めば
- 読め
すべて同じ「読む」ですが、
後ろに来る言葉や働きによって形が変わっています。
つまり日本語は、
形を変えることで文の中での役割を示す言語
なのです。
活用形の名前は何を意味しているのか
実は活用形の名前は、
何につながる形なのか
を表しています。
| 活用形 | 意味 |
|---|---|
| 未然形 | まだ起こっていないことにつながる |
| 連用形 | 用言につながる |
| 終止形 | 文を終える |
| 連体形 | 体言(名詞)につながる |
| 仮定形 | 仮定につながる |
| 命令形 | 命令になる |
こうして見ると、
活用形の名前は単なる暗記事項ではなく、
言葉の働きを表すラベル
だったことが分かります。
コラム:なぜ「未然→連用→終止→連体→仮定→命令」の順なのか
ふと疑問に思います。
なぜ活用形は、
- 未然形
- 連用形
- 終止形
- 連体形
- 仮定形
- 命令形
の順なのでしょうか。
実は、この順番そのものに絶対的な歴史的必然があるわけではありません。
しかし、
文が展開していく流れ
として考えると理解しやすくなります。
① 未然形
まだ起きていない状態
- 読まない
- 行かない
② 連用形
動作や状態が動き始める
- 読みます
- 読んで
③ 終止形
文が完成する
- 本を読む。
- 学校へ行く。
④ 連体形
名詞へつながる
- 読む本
- 行く人
⑤ 仮定形
条件を作る
- 読めば
- 行けば
⑥ 命令形
相手へ働きかける
- 読め
- 行け
こうして見ると、
活用形は日本語が文を広げていく流れを表しているようにも見えてきます。
連用形とは何か
連用形とは、
用言につながる形
です。
国語でいう用言とは、
- 動詞
- 形容詞
- 形容動詞
のことです。
例えば、
- 本を読んで寝る
- 急いで走る
- 静かに話す
では、
- 寝る
- 走る
- 話す
という用言につながっています。
だから「連用形」です。
日本語学習者は連用形をどう学ぶのか
私たちは感覚的に使っていますが、
日本語学習者は、
- 食べる → 食べて
- 飲む → 飲んで
- 行く → 行って
- 書く → 書いて
のような「て形」として学びます。
そして、
- ご飯を食べて学校へ行く
- 疲れて早く寝た
のような表現を通して、
動詞の形を変えることで文をつなぐ
ことを学びます。
つまり外国人から見ても、
日本語は
語の形を変えて意味をつなぐ言語
なのです。
連体形とは何か
連体形とは、
体言(名詞)につながる形
です。
例えば、
- 昨日買った本
- 走っている人
- 赤い花
- 静かな部屋
これらはすべて、
後ろの名詞を説明しています。
だから連体形です。
日本語学習者は連体修飾をどう学ぶのか
日本語学習者にとって、
連体修飾は大きな壁です。
例えば、
- 私が昨日買った本
- 友達が作った料理
- 教室で勉強している生徒
日本語では、
説明する文をそのまま名詞の前に置く
ことができます。
しかし英語では、
- the book that I bought yesterday
- the food that my friend made
- the student who is studying in the classroom
のように構造を作る必要があります。
日本語は名詞の前に説明を積み重ねる
例えば、
- 昨日駅前の本屋で買った本
- 先生が授業で紹介していた映画
- 友達にもらった大切なプレゼント
私たちはこれを自然に理解できます。
つまり日本語は、
名詞の前に説明を積み重ねることが得意な言語
なのです。
日本語はつなげる、英語は区切る
ここが今回の記事の核心です。
日本語では、
- 本を読んで寝た
- 昨日買った本
のように、
語の形を変えることで自然につなげます。
一方、英語では、
- and
- because
- that
- who
- which
- to
- -ing
などの道具を使います。
つまり、
日本語は形を変えてつなぐ
英語は構造を作ってつなぐ
のです。
ここまでのシリーズとつながる話
本シリーズの第1回で、
私は
英語は語順が命
という話をしました。
今回の内容は、その話の続きです。
日本語では、
- 助詞
- 活用
- 連用形
- 連体形
によって、
言葉同士の関係を示すことができます。
例えば、
- 私は昨日映画を見た。
- 昨日私は映画を見た。
どちらも自然な日本語です。
語順が多少変わっても、
助詞や活用によって関係が分かるからです。
また、
- 昨日買った本
も自然に成立します。
つまり日本語は、
語順以外の情報が豊富な言語
なのです。
英語はなぜ語順が命なのか
一方で英語は、
日本語ほど豊かな活用体系を持ちません。
また、
「は」「が」「を」のような助詞もありません。
だから英語は、
語順によって関係を示す
必要があります。
例えば、
- I love you.
- You love me.
では、
同じ単語を使っていても、
語順が変わるだけで意味が変わります。
つまり、
英語は単に「語順が大事」なのではありません。
より正確には、
英語は語順によって文法関係を示す言語
なのです。
「昨日買った本」はなぜ英語で長くなるのか
日本語
- 昨日買った本
英語
- the book that I bought yesterday
なぜ長くなるのでしょうか。
それは英語が、
一度文を作ってから名詞につなぐ言語
だからです。
日本語では、
「昨日買った」がそのまま本を説明できます。
しかし英語では、
まず
- I bought the book yesterday.
という文を作り、
そこから
- the book that I bought yesterday
へ変換します。
英語は構造を保ちながら修飾するのです。
分詞・関係代名詞・不定詞も語順を守るための仕組み
ここまで見てくると、
- 関係代名詞
- 分詞
- 不定詞
も違って見えてきます。
これらは単なる文法項目ではありません。
英語が語順を崩さずに情報を追加するための道具
なのです。
例えば、
- running boy
- broken window
は、
語順を守ったまま名詞を説明しています。
また、
- to study
- to help
- to learn
も、
語順を保ちながら目的や意図を追加する仕組みです。
英語指導への接続
ここまで見ると、
英語指導で大切なことが見えてきます。
それは、
英語は一度区切ってからつなぐ
という感覚です。
日本語のように流れでつなげるのではなく、
① まず文を作る
② 説明したい部分を決める
③ 適切な道具を選ぶ
という順番が必要です。
まとめ
日本語は、
形を変えてつなぐ言語
です。
連用形によって動作や状態をつなぎ、
連体形によって名詞を説明します。
そして、
助詞や活用によって関係を示すため、
語順への依存度は比較的低いと言えます。
一方、英語は、
構造を作ってつなぐ言語
です。
接続詞、関係代名詞、不定詞、分詞などを使いながら、
言葉同士の関係を明確にします。
そしてその根底には、
語順によって関係を示す
という特徴があります。
本シリーズの第1回で述べたように、
英語は語順が命
です。
しかしそれは単なる暗記事項ではありません。
より正確に言えば、
英語は語順によって文法関係を示す言語
だからこそ、語順が重要なのです。
次回予告
次回は、
分詞・不定詞・関係代名詞の正体
を扱います。
バラバラに学習しがちなこれらの文法事項を、
「英語が語順を守りながら情報を追加するための道具」
という視点から整理していきます。
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